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2007年12月29日

コラム「風」歴史に禍根を残す「日本軍関与」検定訂正承認:川瀬俊治

高校歴史教科書、沖縄戦・集団自決(強制集団死)問題での「日本軍の強制」削除検定は、「日本軍の強制」に落ち着いた。この文科省方針を「政治的」失態とする読売の社説から、検定制度そのものを見直せとする毎日の社説まで新聞論調の振幅は大きい。しかし、……。

▼結論は「日本軍の強制」は断固として認めなかったのである。「日本軍の関与」だから「評価できる」となるのだろうか。読売社説などは「関与」すら否定的評価なのだが。

▼ここで原点にもどりたい。歴史は解釈の前に事実に関する検証がある。つまり具体的な事実があるのかどうかの基礎の基礎の作業が求められる。それを終えて、今回の場合なら「軍命」がなかったと結づけるならいい。そうではない。

▼沖縄の新聞が伝えるところでは、「集団自決」の現場にいながら命拾いをした多くの体験者らがこれまで「軍の強制」を証言してきた。その事実を検定審が一つ一つ丹念に検証した形跡はない」「検定審の意見聴取に対して大城将保氏(沖縄県史編集委員)は「直接命令を下した指揮官名まで判明している事例も少なくない」と指摘している」(琉球新報社説)とある。

▼さらに沖縄タイムスの一般記事ではより具体的だ。ある執筆者の弁としてこうある。当初訂正した「日本軍は…集団自害と殺しあいを強制した」との記述で調査官の指摘があり、「日本軍が…集団自害と殺しあいを誘導し、強制した」と再申請。 「しかし、この記述も認められず、同社はいったん申請の取り下げを検討した。その後、調査官が「(申請の)不承認はあり得ない」として再々申請を強く求めたため、「日本軍」の主語を削除した」と報じている。 さらに「体験者の証言を掲載した「囲み」で、「集団自決」について「軍から命令が出たとの知らせがあり」との記述を加えて申請したが、差し戻された」という事例も紹介されている。

▼人は具体的な事実を知ることにより認識が変わる。沖縄の新聞の報道にふれなかったら「「集団自決が起きたのは、日本軍の行為が主たる原因」と読める内容」「「軍の強制」を認めなかった検定意見を撤回しなかったものの、内容を事実上修正する結果となった」(朝日新聞)という論調に満足して、「これでよかった」となってしまう。

▼具体的な事実すら検証せず「軍の関与」までは譲った検定とは何なのか。沖縄が動かした全国の世論により検定意見は「関与」までは改められた。しかし「軍命」は採用しない。琉球新報社説は、沖縄戦研究の積み重ねを無視するに至った理由は、不透明であり、検定審はその説明責任を尽くすべきと主張している。史実をあいまいにすることで生じる認識は、戦争の実相に対するあいまいさに直結する。あいまいにしなければならないのはなぜか。このままなら後世に禍根を残すとまで書く言論(琉球新報)は、本土の新聞との歴史への向き合い方の差をこれほど示す文章はない。

2007年12月29日 09:32

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