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2007年12月30日

本澤二郎の政治評論「本気で喜べない薬害肝炎処理」;本澤二郎

[東京=「ジャーナリスト同盟」通信提供]
 福田首相の政治決断という政治的パフォーマンスで、薬害肝炎による被害者救済が決着することになった。原告は「満額回答」といって喜んでいるのだが、果たしてそうだろうか。すっきりとは受け止められない。

 行政と司法と人命を奪いかねない薬を販売した薬品会社の責任がどうなのか。なぜ、事件は起きたのか。どこに原因があったのか。問題薬を認可申請した会社関係者と厚生官僚の間に何があったのか。事件は20年前である。真相を明らかにして処罰する必要があるではないのか。時効の壁を乗り越える必要があろう。これにメスを入れないで、お上の側に配慮した裁判官の責任も問いたい。これらが国民の思いではないだろうか。以上の疑問に答えない議員立法による処理だと、同じような薬害が再発することになるのである。
 問題の第一は、解決法案を政府が出さないで立法府に押し付けた点である。ここにお上・官僚の断固たる意思が感じられる。「官僚機構は神聖にして侵すべからず」という戦前の国家主義価値観が生き残っているように思えるのだが、どうだろうか。立法・司法に超越していることの、何よりの証拠であろう。それは戦後日本の危うさとも比例しているという事実を、あえて指摘しておく必要があろう。
 問題の第二は、与党が本気でこうした解決をしたわけではないという点である。この裁判は一審判決まで4年が経過している。厚生省が認可して20年である。これに政府も司法も、そして当然のことながら薬品企業も被害者の訴えを蹴飛ばしてきている。悪魔のような官僚と会社役員と司法官に、被害者は翻弄されてきたのである。心のこもった処理では全くないのである。
 問題の第三は、それでいてなぜ政府与党は方針を転換させたのか。いうまでもなく、それは7月の参院選による安倍自民党の大敗北である。目前の総選挙で自公与党の敗北は、明白そのものである。国民の不安・不信の核心である年金問題の解決は、安倍公約が偽りであることが判明している。福田内閣は自民党最後の内閣とみられているからだ。少しでも選挙を有利にしたい、そのための譲歩にすぎない。心の底からの反省も謝罪もない決着に問題があるのである。ワルを処罰しようとさえしていないではないか。
 問題の第四は、原告弁護団の作戦勝ちだったことにもよる。こちらも法廷での正攻法による勝利をあきらめて、法廷外である種の演技を被害者に押し付けていた、と見られがちである。か弱い女性をカメラやマイクの前で泣き叫ぶお涙頂戴に、門外漢の多数国民は同情した。それを珍しくマスコミは執拗に取り上げたのだ。これに福田内閣は屈服してしまったのである。
 問題の第五は、しからば同じような被害に遭遇している人たちに対して、同じように救済するのであろうか。お上による被害者は、薬害一つとってもたくさんいるに違いない。マスコミが取り上げようとしない被害者への救済をどうするのか。この中には外国人もいるではないか。従軍慰安婦や強制労働者ら戦争被害者こそ真っ先に手をつけなければなるまい。彼らへの司法・行政・立法とマスコミの冷たさが、改めて問われている。

2007年12月30日 07:40

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