2008年01月30日
映写室NO.135 人のセックスを笑うな&L change the WorLd:犬塚芳美
―松山ケンイチ主演作2本―
私的にも世間的にも、今一晩旬な男優は松山ケンイチだ。昨年末には「椿三十郎」で初々しい若侍を演じ、今度は続けさまの主演作公開。切ない恋に悩む若者と天才探偵Lをそれぞれ違った表情で演じ、又もや魅せられた2本です。
1.人のセックスを笑うな
<凄い題名だけど、これは原作者山崎ナオコーラ>の戦略で、書店で目立つようにと付けられたもの。年上のミステリアスな女性に恋した男の子と、その男の子が好きな女の子のいじらしい恋心、年下の男を翻弄しながら何処か空ろな四十路の女と、3人の心模様がリアルに描かれていく。美術学校が舞台だけに今の感覚語が頻繁に飛び交い、(若い人たちって仲間同士ではこんな風に話すのか)と、今更ながらに自分の年を感じた。男子も女子もユニセックスで優しい。傷つきやすくて自分にも未来にも自信のない姿に胸が疼く。
<みるめ(松山ケンイチ)と堂本とえんちゃん(蒼井優>)は、早朝の町外れで裸足の女(永作博美)をトラックに乗せる。ある日学校で隣の人にタバコの火を借りると、その時の女だった。彼女は猪熊ユリ、新任のリトグラフの講師らしい。…と、偶然の出会いで始まり、後は大人の作為で、ユリは20才も年下の男の子の心を掴むのだけれど、この不思議な関係をリアルに感じたのは、肢体が少年の様にしなやかな年齢不詳の永作の魔力と、戸惑う顔がまだまだ幼い松山の中途半端な年齢の魅力だと思う。
<敢えて男ではなく男の子と>書いているように、ここでの松山は男と言うにはあまりにピュアで初々しい。しかも、どう見てもユリには男の子扱いにしかされていないのだ。もちろんそれを憤慨するほど大人でもない。ユリに絵のモデルになってと頼まれ、静かなアトリエに連れて行かれるくだりなんて、気恥ずかしい程の手管だけれど、誘うのが年上の女教師で誘われるのが男子生徒、しかも二人がそこへ行くのが自転車の2人乗りと言うのが、この作品の透明感だと思う。
<そんな2人をヤキモキして見つめる>えんちゃんを演じる蒼井も、お得意の美学生役を今回は神秘性よりは幼さで演じ、拗ねた可愛い横顔を見せている。この年代の片思いのやるせなさが伝わってきた。2人を翻弄するユリが幸せかと言ったら、20才から見ると大人の40才も、苛立ちや未熟さの中。彼女も自分の中に確かなものがない。生きる辛さ、恋する切なさ、人はそれをどんな風に乗り越えて年を重ねるのだろう。大人未満の3人のそんなあやふやな物を描く、この物語の空気感が好きだ。
関西では2月2日(土)よりテアトル梅田、
京都みなみ会館、シネカノン神戸で上映
※ディープな情報
この作品の美術監督の木村威夫さん(89才)が、昨夏「面白い作品を撮っている」と嬉しそうに話された通り、美術的に色々工夫がされている。数々の巨匠と仕事を共にした木村さんの美術の特徴は、リアルなセットを作りながら、その中に心象風景を形にした何かを潜ますアバンギャルドさ。この作品にもその両方が遺憾なく発揮されている。
2.L change the WorLd (この作品の舞台挨拶レポートもあります)
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(C) 2008「L」FILM PARTNERS (C) 2008「L」PLOT PRODUCE
<大ヒット作「デスノート」のスピンオフで>、本作はLに焦点を絞り、最期に何があったのかを解いたもの。モニターを見て事件を処理したバーチャルな世界から、社会に出て生身の人間と対決するLは、そこでもLでいれるのかどうか。監督と松山はLのイメージを賭けた、演技的にも映像的にも難しい領域に挑む。荒筋はこんなだ。残された時間は23日、L(松山ケンイチ)は一人黙々と事件を処理する。そこへタイで消滅した村の唯一の生存者の少年が来た。次には少女が、非業の死を遂げた父親からあるものを託されてやって来る。今回は死よりも死を避ける戦いがテーマ。死をかけても守りたいものは何か。
<私はLの何に惹かれるのだろう> 告白すると、始まりはテレビで放映された「デスノート」だった。何気なく観たのに、遅ればせながらこの物語の面白さと、Lなのか扮する俳優のものなのか区別の付かないキャラクターの魅力に嵌ってしまったのだ。見た目もある。膝を抱えて座る姿、白い肌と隈取した目の上目使いのクールさ、前かがみの広い肩と長い手足はバランスが悪くて未来的。抜群の頭脳でまるで生活感がないから、ワタリが生んだロボットの様でもある。実を言うと、最後にそんな種明かしがされるのではと思っていたほどだ。
<しかもLには、何処かに見え過ぎる人>が抱える哀愁があって、何かが欠けている。完璧な頭脳とその不完全さが、大人までも虜にする。そして今回発揮される柔らかい心が初々しい。
今まで特殊な設定で保った神秘性は、外に出ても揺るがなかった。走る時も猫背とがに股は直らず(必見の凄さ!)、Lの周りだけ異空間が出現する。23日を描けば浮き上がる新たな死神、人類は生き延びれるのか、生きる事に意味があるのか。奇想天外な物語が突きつける真摯な命題と共に、Lと言う人格とスタイルを作り上げた松山の力技が見所だ。
<「デスノート」の2作を観た後で観るのがベスト>だけれど、この作品だけでも大丈夫。頭を柔らかくして観れば、Lの魅力に嵌っているでしょう。
2月9日(土)より全国でロードショー
※デスノートとは
死神の落としたもので、このノートに名前を書かれた人間は死ぬ。前2作は、これを使って犯罪者を粛清し、新しい世界の神になろうとする夜神月ライト(=キラ)と、キラを突き止め、事件を終わらせようとする天才探偵Lの戦いの物語。このノートで操れる死の時間は23日以内。
2008年01月30日 07:00