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2008年02月28日

本澤二郎の政治評論「福田康夫内閣の現状」:本澤二郎

[東京=「ジャーナリスト同盟」通信提供] 平和憲法の解体を目標に掲げた戦後最右翼の安倍内閣が、昨年7月の参院選挙で歴史的敗北を喫した後を継承した福田内閣は、当初、国民が期待した政策の実現に成功していない。安倍内閣に比べて、よりましな福田内閣もまた苦戦して前途は厳しい状況にある。

<不人気の原因>
 福田内閣の支持率は、マスコミによる世論調査によってその低迷ぶりが露呈している。50%以上の支持率であれば、政権は安定している。40%でもまずまずの政権運営が可能であるが、現在は30%台と低い。国民の支持率は高くはないのだ。20%台に入ると、倒閣運動が表面化するというのが、自民党の暗黙の了解事項になっている。この数字から福田内閣の厳しい現状を理解できよう。
 どうしてなのか。理由は少なくないのだが、福田内閣は発足すると、直ちに安倍内閣が積み残したアフガン戦争支援のための油の給油法の継続を強行した。国の借金1000兆円といわれる厳しい財政事情に加えて、日本国憲法が禁じる戦争支援という理由から、国民の支持を得られない法案の強行に野党は反発、参院でこの問題法案は否決されたほどである。一面、それは健全な国民と野党を印象付けていよう。
 しかも、引き続き通常国会が始まると、現在は「ガソリン国会」と言われているように、日本の高いガソリン税の存続を強行しようとしている。1リットル当たり25円もの暫定税率が付加されているのだが、福田内閣は道路整備財源として今後10年これを継続するため、なんとしてもこれの成立を図ろうとして野党と激突している。ガソリンの高騰で国民の不満は増大している。物価高も。
 日本の現状は、一部財閥企業が潤い、中小零細企業とそこで働く従業員との所得の格差はとめどなく肥大化している。便利な高速道路も高額な高速道路料金で、これを利用できない車も少なくない。しかもガソリンは高い。この法案に対しても福田内閣への不満は拡大している。
 国民にとってより切実な問題は、老後の安定を確保できるはずだった年金制度が壊れていることへの不安である。しかも、この1年の間に、これまで国民が支払った年金の管理のでたらめ振りが次々と発覚した。その問題件数は5000万件を越えており、これの改善が不可能に近いことも判明してきた。踏んだり蹴ったりが、偽りのない国民感情である。信頼してきた公務員・国家に裏切られたことへの怒りが充満している。
 また防衛省高官の腐敗、ミサイル護衛艦で知られるイージス艦による漁船沈没事件、沖縄米軍兵士の少女暴行事件など政府にとってマイナス事件も相次いでいる。
 ただでさえもバブル経済崩壊後の経済混迷に加え、ここに来ての米国経済の景気減速が追い討ちをかけてきていることも、格差社会の深化とともに自公政権への反発となって支持率低下となって現れてきている。
<政局の動向>
 今年の政治イベントは、衆院の解散と総選挙の時期とその結果の行方である。既に民意は民主党中心とする野党に流れている。昨年の参院選挙が立証しているところだが、したがって自公政権は解散・総選挙の時期を引き延ばそうと躍起になっている。
 他方、攻める民主党も肝心の選挙準備が整っているという状況にない。給油問題法案で政府をとことん追い詰め切れなかった原因である。ガソリン国会の頂点は3月末に訪れるのだが、ここでの与野党激突となれば、4月解散・総選挙となる。これもまた可能性は五分五分と見られている。
 福田内閣は7月の環境サミットを成功させての解散に期待を寄せているが、この間、支持率が低迷すれば麻生太郎・平沼赳夫・中川昭一・安倍晋三ら台湾ロビー4人組が、福田打倒に動くことも予想される。既に水面下の動きが活発だ。内憂外患の福田内閣の現在といっていいだろう。
 台湾派(国家主義=筆者は天皇制国家主義と呼んでいる)の最大眼目は、戦争の出来ない日本国憲法を解体して、戦争の出来る日本にするための改憲に的を絞っている。これの抵抗勢力が加藤紘一らの政界再編派である。与野党のリベラル派による結集でもって、右翼改憲派を牽制しようというものだろう。
 筆者は、レベラル派の結集に加えて護憲の共産・社民両党による「平和党」結成を呼びかけている。護憲・市民連合による一本化による平和国家の維持・存続である。これがアジアの平和と安定に不可欠と認識しているからだ。
 現状では資金力のある「麻生内閣」を否定できないかもしれない。その点で、福田も加藤も正念場を迎えているのである。
 年内に実施されるはずの総選挙で自公政権が存続できるのかどうか、現状推移だとかなり困難とみられる。あるいは大連立の可能性も。いずれも平和憲法の行方ともからんでおり、アジア各国の対応も注目を集めることになろう。
<アジア重視>
 福田外交の核心はアジア重視である。小泉の「脱亜入欧」とは異なり、このことについての国民の支持は高い。日中韓とASEANの経済的連携は、アジアの21世紀を約束するだろう。これへの福田認識はまともだと見ていいだろう。
 福田はかつて熱心な日華議員懇談会のメンバーだった。総理大臣になるまで幹事までしていた。現在は顧問である。しかし、いまや加藤ら中国派の期待の星であり、森喜朗や中川、安倍、麻生ら台湾派の右翼議員と一線を画している。
 その原因を、彼が小泉内閣の官房長官をしていた時代にさかのぼることで理解が出来る。それまで福田は、外交についての見識は持ち合わせていなかった。官房長官になった時点でちょくちょく宮澤喜一の門をたたいた。不得手な外交を、戦後の日本外交の大御所である宮澤に教えを請うたのである。
 宮澤は戦後の日米外交の生き字引として知られた。その一方でワシントンにのめり込むという愚を避けた。均衡ある外交が日本の正しい道だと認識していた。筆者は宮澤が政権を担当したその日に単独会見、アジア外交の重要性を直接確認した経験を持つ。祖父の小川平吉は孫文と交流があったくらいである。
宮澤の師である吉田茂は中国理解が深かったし、先輩の池田勇人は岸内閣が破壊した日中関係を修復している。兄貴分の大平正芳は、72年の国交回復を実現した立役者である。
福田は宮澤外交を自分のものにしていたのである。そうすることで、日中平和友好条約を締結した実父・赳夫のレベルに到達したのだ。彼には外務省の中国派にいい友人がいることも、よく知られている。
とはいえ彼の所属する森派などには台湾派が大挙、結集している。自由に身動きできる状況にはない。現に外務省は昨年、新装オープンした南京大虐殺記念館に抗議の申し入れをして右翼に配慮している。
<歴史認識>
 日本のアジア重視は、極端な日米同盟論者によってしばしば後退を余儀なくされてきた。彼らの弱点はまた、過去の歴史を軽視、もしくは正当化をはかり、アジア諸国民の顰蹙を買ってしまうことである。
 そもそもの原因は、天皇が戦争責任をとらなかったことと、侵略戦争に深く加担してきた官僚(筆者は「天皇の官僚」と呼んでいる)たちが、戦後日本の政治と行政に関与した結果、義務教育の場で近現代史を学ばせなかったことに由来する。
 このことがアジアと日本の溝を深くさせてしてしまった元凶である。従来からアジア諸国民は、日本に対して歴史を直視・教訓とするように厳しく指摘してきた。その結果、海部総理大臣がシンガポールで「これからは近現代史を学ばせる」と世界に公約したものの、実際の教育現場に生かされることはなかった。
 筆者は最近、高卒の専門学校の50人ほどの生徒に対して「南京大虐殺について知っていることを書きなさい」と紙を渡してみた。一人としてまともな回答をする生徒はいなかった。アジアと日本の喉に突き刺さったトゲであるが、福田内閣が4月の中国主席の訪問の際、どう応えるのか。また中国主席がどう主張するのか。大いに注目される。アジア重視の福田の決断が見ものであろう。
<台湾派の攻勢>
 福田内閣にとって後門の虎が小沢・民主党なら、前門の虎は自民党内の台湾派ということになる。自民党総裁選で福田に敗北した麻生は、それでも予想外の議員票を獲得して沈没を免れた。これは豊富な政治資金の存在を内外に誇示したものなのだ。のみならず今日においても、復活をかけた挑戦に意欲的とみられている。
 麻生の支援部隊長が中川である。台湾派の新たな旗揚げを印象付けるように、先ごろ福田沈没を見透かすかのように政治集団を発足させた。自民党最右翼の平沼と安倍が強力に支援している。自民党幹事長の伊吹文明も有力支援者と見られている。中川の資金、平沼の資金も潤沢という。
 どうしてか台湾派には「金があふれている」という指摘が自民党内の見方である。その周囲に、政治家がハイエナのようにまとわりつくことになる。「台湾の機密工作資金を洗えばわかるだろう」との声も聞かれる。
 民主党内の台湾派とも連携が取れているようだ。「松下政経塾」の議員らだ。同塾の議員は小泉や安倍の周囲にも目立つ。兵器財閥との関係も知られている。現在は中国にも行く小沢だが、金丸側近時代は年中、台湾へ通っていた。
<環境対策>
 福田は環境問題に関心が深い。だからといって具体的な指針は見えてきていないものの、7月の先進国首脳会談を環境サミットと位置づけて、政治的成果にしたい考えである。4月の中国主席訪問においても具体策の一部を明示するかもしれない。アジアのCO2排出大国である日本・中国・インドの3カ国首脳会談をサミット前に開いて成果を出せれば、国際社会は福田のみならずアジアに注目が集まるだろう。公害大国・日本の経験を世界に知らせるだけでなく、まだ問題はたくさん残っている。都会の空気汚染、土壌の農薬汚染、農薬野菜などは、食の安全とも深く関係している。この分野では、進歩と成果を共有する目標を掲げて財団法人・日中環境協会が、中国人元留学生や国会議員らで組織され、4月には両国の政府・民間合同の会議を開催する計画が進行中である。筆者も顧問として小さな汗をかいている。
 日本では電気自動車の開発が進んでいる。小型車では技術・コストの問題がなくなっている。これを中国で大量生産にこぎつけることが出来るのかどうか。地球の温暖抑止の行方の鍵のひとつを握っていようか。
<格差問題>
 格差の拡大は、ひとり日本だけの問題ではない。韓国や中国も同様である。格差の是正は、その元凶である制度の改革によることでのみ対応は可能である。
 これに成功するかどうかで、その国の体制の安定度を測定できるであろう。日本の場合、それはもっとも厳しいと見られている。深刻な財政悪化を抱えているからであるが、これを逆手にとれば、あるいは可能性を見出せるかもしれない。一種の社会主義政策の導入も考慮に入れる必要があるだろう。
 「弱者に光を」が政治の要諦である。福田内閣のみならず、21世紀の政治指導者に課せられた重い課題なのである。
2008年2月22日記

2008年02月28日 10:50

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