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2008年03月31日
本澤二郎の国際評論「スターリン後遺症」 : 本澤二郎
「東京=[ジャーナリスト同盟通信」提供]数日前(3月25日)のことである。ウクライナの外務大臣が日本記者クラブで記者会見を行った。彼の口から「ジェノサイド」という予想外な発言が飛び出した。ホロコーストとほぼ同じように大量虐殺と解釈されているのだが、ソ連時代のウクライナでそれがあったということを知る日本人記者は、筆者を含めて少ないようだった。ウクライナでは「ホルドモール」と呼んでいるのだという。スターリン時代の大事件なのだ。ホルドとは飢饉・飢えという、モールは殺戮を意味する。
外相のオグリスコはキエフ生まれの51歳。根っからの外交官である。この英語とドイツ語が堪能な外交官は、冒頭の30分スピーチの最後に「今年はウクライナにとって最大の悲劇の記念すべき年である」といって、このことを特別に紹介した。記者団には理解ができなかったらしく、記事にする新聞はなかったようだ。
彼は、ウクライナの大量虐殺をジェノサイド、地元民がホルドモールと命名したと説明したあと、被害者の数を「何百万人」と表現した。なんということだろうか。スターリンの粛清は知られているが、ウクライナでのジェノサイドは初耳であったから、筆者などは当初、聞き間違いではないだろうか、と思ったほどである。
ジェノサイドは人道に対する罪である。国際法違反だ。「民族・ウクライナ国家を標的にしたものだ。当然、国連の範疇に入る。このホルドモール・大量虐殺の位置づけをしなければならない。人為的な飢饉もまた兵器であるということを、国際的に喚起したい。このような犯罪を阻止しなければならない。国連での日本の対応を期待したい」と訴えた。
ヒトラーはユダヤ人を毒ガス室に押し込んで600万人を虐殺したが、スターリンは飢え・飢饉でもって何百万人ものウクライナ人を虐殺したのである。穀倉地帯での飢饉とはどういうものであったのか、知る由もないが人類の愚かさは犬畜生に劣ることを物語っている。
こうした過去が独立(91年)へと突き進んだ背景だったのであろう。
ユーシェンコ率いるウクライナが、モスクワから離脱してNATO加盟に向けて走っているが、ロシアは止めようと必死である。
しかし、ウクライナはエネルギーを隣人であるロシアに依存している。ロシアはウクライナに敷設されているパイプラインを利用しているという関係にある。ホルドモールを政治的に利用できるが、それよりも人道的犯罪・国際法違反事件を正当に認知させることのほうが重要であろう。過去の事件を政治的に利用することは問題を複雑にするだけである。
国連の調査が開始されねばならないだろう。新生ロシアも独自に調査し、反省と謝罪をすべきだろう。二度と繰り返さないために。人間を飢えさせることで、大量虐殺をする非人道的犯罪を許さないルールを確立しなければなるまい。
人道問題は政治と切り離し、すみやかな結論を見出す必要がある。日本の役割だ。2008年3月30日記
2008年03月31日 03:32