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2008年05月03日

憲法特集 本澤二郎の政治評論「日本国憲法61歳」:本澤二郎

[東京=「ジャーナリスト同盟」通信提供]
 世界に冠たる日本国憲法が1947年5月3日に施行されて61歳を迎えた。風雪によく耐えての61年に感謝したい。「報恩」という言葉は、日本人であれば等しく平和憲法のために用いられるべきかもしれない。

 近年は、小泉―安倍の内閣でさんざんにいたぶられたが、先の名古屋高裁によるイラク派兵違憲という当たり前だが、それでも画期的判決で元気を取り戻した。「死の商人に屈服するものか」の気概を見て取れる。平和・軍縮派の宇都宮徳馬さんは常々「日本人の平和主義はいい加減なものではない」と語っていた。また、改憲軍拡派に対しては「このリベラルのすばらしい憲法を変える?そんな輩は大馬鹿野郎さ」と激高、中曽根康弘やそれに追従するマスコミ人を叱り飛ばしたものである。宇都宮さんの後輩・中曽根内閣官房長官を歴任した後藤田正晴さんは「わしの目の黒い間は改憲させない」と中曽根をけん制しまっていた。
 人生90年、100年である。61歳の平和憲法は若い。筆者の母もこの5月に90歳になる。4日は自宅で誕生会だ。61歳の憲法は、これからまだまだこの地球でやることが沢山ある。100年、200年と生きてくれないと、アジアの平和と安定に加え、この地球から愚かな戦争と環境を守れない。
 思い起こすと、筆者が憲法9条に出会ったのは中央大学法学部の憲法講義の時であった。それまでは、まともに勉強をする機会も環境もなかった。侵略戦争被害による農村の貧困家庭では机も椅子もなかった。中・高校授業で9条に出会えなかった。だから御茶ノ水の大教室で受けた橋本公旦教授の9条解釈講義に、それこそ目からウロコが落ちる思いで感動したことが、まるで昨日のように忘れられない。憲法学者の自信に満ちた解釈に「日本はすごい国だ。戦争をしない平和な国。自衛隊は憲法違反なのだ」と太鼓判を押してもらい、密かにだが誇らしく思った。本物の愛国心が芽生えた瞬間であった。
 当時、難関の渥美東洋ゼミ(刑事訴訟法)や司法試験のための白門会研究室にも席を置いたものの、アルバイト学生の才能が災いしてか4年間かけて五体に染み込んだのは9条だけだった。しかし、それでもよかった。
 政治記者になって20年かけて自民党派閥にのめり込んだが、護憲派の宏池会、三木派、水田派などが好きだった。ポスト中曽根の総裁選挙で出馬した宏池会会長の宮澤喜一さんが、その第一声で「核戦争の危機が迫る中で、9条はますます光り輝いてきている」と臆することなく叫んだのには感激した。傍らに、後に防衛庁長官をした池田行彦氏(池田勇人の娘婿)がいた。彼が「やあ、驚いた。いい演説だね」と声をかけてくれたのも忘れられない。憲法制定時の吉田茂総理大臣に仕え、その影響を最も受けた保守本流の嫡子からの舌鋒である。ここに自民党の強さが存在していた。今はない。
 93年に米国務省の招待を受けて1ヶ月かけて取材旅行をした時のことだ。「日本に改憲を押し付けようとの勢力が存在するのか否か」を目的にして全土を歩いた。たまたま中西部の共和党支持の企業家と議論になった。「いま米国は苦しい。こんなときだから日本は軍事力を強化すべきだ」と力説してきた。筆者は日本の過去を詳しく説明した。平和憲法のこと、そしてアジア侵略のことを説明すると、なんと彼は「それを全く知らなかった。君の言うとおりだ。自分が間違っていた」と持論を撤回してくれた。話せばわかる保守派のアメリカ人にいたく感激した。
 西海岸の民家に呼ばれたさい、日本人銀行家夫人と一緒になった。彼女は「先日、イギリスのサッチャーの演説を聞いて、改めて日本も軍事力を強めるべきだと思う」という予想外の発言をした。すると、そばにいた知性派の白人男性が「イギリスと日本は違いませんか」と釘を刺した。白人弁護士もいた。彼は「本当ならアメリカも日本の9条憲法にするべきだよ」といった。皆平和憲法を理解し、評価してくれた。
 加州サクラメントでは、敗戦後の日本で通訳将校として活躍した日系アメリカ人に会った。右翼の主張である押し付け憲法論を紹介して、当時を知る彼の意見を求めた。即座に否定すると「どこに行っても国民は新憲法を喜んでいた。この目で全国を歩いて確認した。反対する人などいなかった。日本は二度と戦争をしてはいけないよ」と諭すように事情を説明してくれた。
 このときは国務省、国防総省、大統領府、議会、シンクタンク、マスコミ、市民など幅広く取材したのだが、結局のところ現在ブッシュ周辺にたむろしているネオコンを見つけ出すことはできなかった。健全なアメリカ社会は、むしろ読売グループの改憲キャンペーンを紹介すると驚愕した。
 ブッシュ時代も間もなく幕を引く。小泉、安倍を自在に操ったブッシュを米国民は、とうに見放している。過ちを軌道修正できるアメリカである。ブッシュを利用して国民投票法を強行制定した安倍も、沈没を余儀なくされた。政権交代で軌道を修正できれば日本の将来は明るい。民主党にも「死の商人」と連携している右翼議員は存在している。しかし、9条の壁は高くて分厚い。
 財界改憲派の責任者が日本記者クラブでうめいた一言を覚えている。それは「(国民に人気の高い)大江健三郎や吉永小百合に反対されたら、改憲世論で包囲するのは厳しい」と。最近はロ事件報道で有名になった立花隆も護憲の旗を掲げてくれている。「61歳の活躍はこれからだよ」というのが、日本のみならず国際世論なのである。
2008年5月3日記


2008年05月03日 00:12

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