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2008年06月02日

日曜読書欄簡単レビュー;川瀬俊治

月曜日になりましたが、恒例日曜読書欄簡単レビューです。朝日、毎日、日経、産経の4紙から。(敬称略)

 まず小説から。唯川恵『とける、とろける』(新潮社、1470円)―朝日―から。文学的世界の定義は意外と簡単だ。事実ではない。体験談でもない。言葉に紡ぎ出された別世界なのだ。それに入れ込むことが文学を読むことであり、その拡がるイメージ、異世界が人間の本質をえぐるまであらわすならば、その作品を読んだ人の精神的深さ、豊かさは何物にも代えがたい。その必要性を認めない人は文学はいらないし、また他の芸術作品も不要だ。実に簡単な定義だが、もし文学作品を若い時に読んだが、いまはぜんぜんーという人が多いが、要は人間の本質に迫る世界などもう関係ないというわけなのだ。唯川の作品は9編の短編を集めたものだ。評者の阿刀田高はいま述べた文学の本質をおさえながら評している。タイトルから想像できるように、女性の性がテーマ。収録作品の一つである「来訪者」は嫉妬深い夫に悩ませられながら別の男に夢中になる女性が、夫に見放されたヒロインに性の喜びを告白する。「みんな半分ずつ」では離婚する夫婦が「あなたの体も半分ずつよ」と包丁を手に夫に近づく作品。「とろける」のは性により境界が取り払われることかもしれない。人間としての倫理も、社会規範も。そのことが「とろける」であり、読者は別世界のこの作品を読み、人間の本質をかいま見るのかもしれない。

「読み終えた爽快感は普通ではない」と評者の池澤夏樹が書く瀬川深『チューバはうたう mit Tuba』(筑摩書房、1470円)―毎日―は、チューバと中学時代に出合ったヒロインの物語。チューバをめぐる出合いが展開していくらしいが、これが英雄譚になったりしていない。チューバを「主人公」にどうして小説を書けるのか。これは相当の腕がないと書けないだろう。あらすじの紹介も半分もされていないから、作品を読んでいない私にはこれ以上書けない。チューバを「主人公」によく書くとしか言えない。

 阿部彩ほか『生活保護の経済分析』(東京大学出版会、3800円)ー日経ーは、経済分析の手法で制度の実情と改革の方向をさぐる。厚生労働省は新発薬を生保対象者に出すと生保打ち切りの検討を通知した。しかし官僚のこの心無い文章が人々の怒りをうみ、即座に取り止められた。この後発薬問題が論じられている。評者は大林尚。他に年金未納問題、ホームレス問題など論究されている。

 三原文『日本人登場』(松柏社、3675円)ー産経ーは幕末から活躍した日本の軽業師の西洋での足跡をたどった研究書。幕末から西洋から外国人が日本に来たが、逆に日本から西洋に渡った日本人もいる。その1つが軽業師だ。わずかな痕跡をつなぎあわせて軽業師の足跡をたどるーと評者の井上章一は紹介し、「ひねり出された推論にはいちいち感心する」と評している。どうした推論なのかは本書を読んでいただくしかないが、資料は西洋文献になるわけで、その文献読解の努力はすごいとしか言いようがない。

 すしとの出合いが5才のときだというサーシャ・アイゼンバーグ『スシエコニミー』(日本経済新聞出版社、1900円)ー日経ーをあらわした。すしのグローバル化は意外と関心が薄いのだが、著者はアメリカ、スペインなどの例を出し、まぐろの養殖業がスペインで営まれていることを紹介している。日本人には当り前のこおtが海外では驚きを生む。すしの調理の現場でもそうらしい。魚と日本人という文化面から読み解くこともできそうだ。

2008年06月02日 21:29

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